商標登録したのに安心できない?注意点を解説!
自社の商品名やサービス名について商標出願をして、審査をパスして、登録になって、めでたしめでたし。本当にそれで安心なのでしょうか。
日本の商標法では、継続して3年以上使用されていない登録商標に対して、誰でも「登録の取り消し」を求めることのできる制度(不使用取消審判:商標法第50条)を設けています。
不使用取消審判を請求された場合、対象の登録商標の権利者(商標権者)は、その期間内に「登録商標を指定商品・役務に使用していた」ことを証明しなければならず、証明に失敗してしまうと、審判請求された範囲で、商標登録が取り消されてしまいます。
つまり、不使用取消審判が請求されると、権利者側が使用を立証しなければならないのです。
商標の変更のリスク
ところで、事業者は様々な媒体に商標を使用します。例えば、名刺、ECサイト、パッケージ、店舗の装飾などです。登録商標と全く同じ商標を使用できればよいのですが、媒体の性質から登録商標と全く同じ商標を使用することが難しいケースや、媒体のイメージによって若干登録商標を変更して使用する必要があるケースは存在します。
このような使用は、果たして「登録商標の使用」と言えるのでしょうか。
許容される変更例
商標法(第38条、第70条)では、不使用取消審判で使用の証明が求められる登録商標について、以下のものを含むと規定しています。
● 書体のみに変更を加えた同一の文字からなる商標、平仮名、片仮名及びローマ字の文字の表示を相互に変更するものであつて同一の称呼及び観念を生ずる商標、外観において同視される図形からなる商標その他の当該登録商標と社会通念上同一と認められる商標
● その登録商標に類似する商標であって、色彩を登録商標と同一にするものとすれば登録商標と同一の商標であると認められるもの
このような商標としては、例えば、以下のものが該当するとされています。
変更内容 | 例 |
---|---|
書体変更 | MSゴシック → MS明朝 |
平仮名表記を片仮名表記に変更 | そうきょう → ソウキョウ |
片仮名表記をローマ字表記に変更 | ペンシル → PENCIL |
色を変更 | 赤 → 紫 |
判断が難しいケース
ここで、判断が難しいのが「その他の当該登録商標と社会通念上同一と認められる商標」が具体的に何を指すのか、です。どこまで変えれば「登録商標と同じ」と判断されるかは、正直ケースバイケースです。このようなものも同一と判断されるの!?というものもあれば、これでダメなの?というものもあります。
リスクを避けるためのポイント
せっかく商標登録をして、商品や宣伝に使っていたのに、「登録商標と(社会通念上)同一の商標として使用していないからダメ」と言われてしまっては、元も子もありません。このようなリスクを避けるためにも、登録商標はできるだけ変更せずに使用しましょう。また、どうしても変更する必要がある場合は、どこまでならリスクを低減できるか含め、ぜひ、弁理士に相談してください。
まとめ
商標登録後も油断せず、適切に商標を使用し続けることが大切です。登録商標を守るための対策をしっかり行いましょう。