スタートアップ企業や中小企業の場合、設立時に代表者個人で商品名やサービス名の商標登録を受けておき、その後、代表者個人から会社に商標権を移転する、というケースが見受けられます。
代表者個人は会社の経営に深くかかわる立場であるため、移転に際しては、以下の重要事項に注意する必要があります。
1.適正な評価と価格設定
商標権の価値を公正かつ正確に評価することが重要です。
特に、規模の小さい企業の場合、代表者個人≒会社という感覚を持たれている企業は少なくありません。しかし、あくまで代表者個人と会社とは別物です。そのため、少なくとも商標登録までにかかった費用は、譲渡対価として代表者個人に支払われるべきです。
2.利益相反行為の取り扱い
商標権が有償で会社に譲渡される場合、以下の手続きが必要になります。
・取締役会のある会社:取締役会の承認を得る必要があります。この場合、利益相反がある取締役(代表者)は、その決定から除外されるべきです。
・取締役会のない会社:株主総会の承認を得る必要があります。
※商標権が無償で会社に譲渡される場合は、利益相反行為に該当しないため、上記の手当ては不要です。
3.契約書の作成
譲渡条件、価格、支払い方法などを明確に記載した契約書を作成し、双方で署名することが重要です。
4.商標権の移転手続き
特許庁への必要な手続きを適切に行い、商標権の移転登録を完了させる必要があります。
なお、商標権の移転が利益相反行為に該当する場合、移転登録申請には、取締役会の議事録または株主総会の議事録等を添付する必要があります。